ループ構造
ループ構造は、条件が満たされるまで、あるいは指定した回 数まで、同じ処理を繰り返します。
While...End while
While...End while
による制御フロー構造の正式な構文は以下のようになります:
While(Boolean_Expression)
statement(s)
End while
While...End while
ループは、ブール式が true である限り、ループ内のステートメントを実行し続けます。 ループの始めにブール式を評価し、ブール式が FALSE の場合にはループをおこないません。
一般に、While...End while
ループに 入る手前で、ブール式で判定する値を初期化しておきます。 通常はブール式が true になるように設定してからループに入ります。
ブール式は、ループ内の要素を使って設定されなければなりません。そうでなければ、ループは永久に続くでしょう。 以下の例では、NeverStop がいつも true であるので、ループは永久に続きます。
NeverStop:=True
While(NeverStop)
End while
このようにメソッドの実行が制御不能になった場合には、トレース機能を使用し、ループを止めて、問題点を追跡することができます。 メソッドのトレース方法については、エラー処理 の章を見 てください。
例題
CONFIRM("新規レコードを追加しますか?") // ユーザーに確認します
While(OK=1) // 利用者が望む限りループします
ADD RECORD([aTable]) // 新規にレコードを追加します
End while // ループは必ず End while によって終わります
この例では、まずループに入る前に CONFIRM
コマンドによりシステム変数 OK
がセットされます。 ユーザーがダイア ログボックスで OK ボタンをクリックすると、システム変数 OK
に1がセットされ、ループを開始します。 それ以外の場合はシステム変数 OK
に0が設定され、ループをスキップします。 ループに入ると、ADD RECORD
コマンドはループを続けます。これは、ユーザーがレコードを保存した時点で、システム変数 OK
に1が設定されるからです。 ユーザーが最後のレコードを取り消した (保存しない) 時点で、システム変数 OK
に0がセットされ、ループは終了します。
Repeat...Until
Repeat...Until
による制御フロー構造の正式な構文は以下のようになります:
Repeat
statement(s)
Until(Boolean_Expression)
Repeat...Until
ループは、While...End while ループと似ていますが、まずループの後でブール式を判定する点が異なります。 つまり、Repeat...Until
ループは最低でも1回は必ずループを実行しますが、While...End while
ループは最初のブール式が FALSE である場合には、ループを1回も実行しません。
もう一つの While...End while
ループとの相違点は、 Repeat...Until
はブール式が true になるまでループを続行することです。
例題
以下の例を、While...End while
ループの例と比較してください。 ブール式を、初期化しておく必要がない点に注目してください。システム変数 OK
を初期化する CONFIRM
コマンドはありません。
Repeat
ADD RECORD([aTable])
Until(OK=0)
For...End for
For...End for
による制御フロー構造の正式な構文は以下のようになります:
For(Counter_Variable;Start_Expression;End_Expression{;Increment_Expression})
statement(s)
End for
For...End for
ループは、カウンター変数によりループを制御します:
- カウンター変数 Counter_Variable は、数値変数 (実数または倍長整数) で、Start_Expression に指定した値に初期化されます。
- ループを実行するたびに、任意の引数である Increment_Expression の値がカウンター変数に加算されます。 Increment_Expression を指定しない場合、増分値は1になります。
- カウンターが End_Expression の値を超えた時点で、ループを停止します。
重要: Start_Expression、End_Expression、Increment_Expression の値は、ループの始めに一度だけ評価されます。 これらの数値が変数で指定されている場合、ループ内でその変数の値を変更してもループは影響を受けません。
Tip: 特別な目的のために、カウンター変数 Counter_Variable の値を変更することができます。ループ内でカウンター変数を変更すると、ループはその影響を受けます。
- 通常、Start_Expression は End_Expression より小さい。
- Start_Expression と End_Expression が等しい場合、1回だけループがおこなわれます。
- Start_Expression が End_Expression より大きい場合、Increment_Expression に負の値を指定しない限り、ループはおこなわれません。 次に例を示します。
基本的な使用例
- 以下の例は、100回の繰り返しをおこないます:
For(vCounter;1;100)
// なんらかの処理
End for
- 以下の例は、配列 anArray の全要素に対して処理をおこないます:
For($vlElem;1;Size of array(anArray))
// 各配列要素に対する処理
anArray{$vlElem}:=...
End for
- テキスト変数 vtSomeText の文字を一つ一つループ処理します:
For($vlChar;1;Length(vtSomeText))
// 文字がタブであれば
If(Character code(vtSomeText[[$vlChar]])=Tab)
// なんらかの処理をします
End if
End for
- 以下の例は、テーブル [aTable] のカレントセクションの各レコードについて処理をおこないます:
FIRST RECORD([aTable])
For($vlRecord;1;Records in selection([aTable]))
// 各レコードに対する処理
SEND RECORD([aTable])
//...
// 次レコードへ移動します
NEXT RECORD([aTable])
End for
プロジェクトで作成する大部分の For...End for
ループは、上記例題のいずれかの形式になるでしょう。
カウンター変数の減算
ループに際してカウンター変数を増加させるのではなく、減少させたい場合があります。 その場合、Start_Expression に End_Expression より大きい値を設定し、Increment_Expression に負の数を指定する必要があります。 次に挙げる例題は、前述の例と同じ処理を逆の順序でおこないます:
- 以下の例は、100回の繰り返しをおこないます:
For(vCounter;100;1;-1)
// なんらかの処理
End for
- 以下の例は、配列 anArray の全要素に対して処理をおこないます:
For($vlElem;Size of array(anArray);1;-1)
// 各配列要素に対する処理
anArray{$vlElem}:=...
End for
- テキスト変数 vtSomeText の文字を一つ一つループ処理します:
For($vlChar;Length(vtSomeText);1;-1)
// 文字がタブであれば
If(Character code(vtSomeText[[$vlChar]])=Tab)
// なんらかの処理をします
End if
End for
- 以下の例は、テーブル [aTable] のカレントセクションの各レコードについて処理をおこないます:
FIRST RECORD([aTable])
For($vlRecord;Records in selection([aTable]);1;-1)
// 各レコードに対する処理
SEND RECORD([aTable])
//...
// 前レコードへ移動します
PREVIOUS RECORD([aTable])
End for
1より大きな値によるカウンター変数の増加
必要に応じて、Increment_Expression (正または負の値) に、その絶対値が1より大きな値を指定できます。
- 以下の例は、配列 anArray の偶数要素について処理を行います:
For($vlElem;2;Size of array(anArray);2)
// 偶数要素 #2,#4...#2n に対する処理
anArray{$vlElem}:=...
End for
ループ構造の比較
For...End for
ループの例をもう一度見てみましょう。 以下の例は、100回の繰り返しをおこないます:
For(vCounter;1;100)
// なんらかの処理
End for
While...End while
ループと Repeat...Until
ループで、同じ処理を実行する方法を調べてみましょう。 以下は、同じ処理を実行する While...End while
ループです:
$i:=1 // カウンターの初期化
While($i<=100) // 100回のループ
// なんらかの処理
$i:=$i+1 // カウンターの増分が必要
End while
同じことを Repeat...Until
ループで記述すると以下のようになります:
$i:=1 // カウンターの初期化
Repeat
// なんらかの処理
$i:=$i+1 // カウンターの増分が必要
Until($i=100) // 100回のループ
Tip: For...End for
ループは、While...End while
や Repeat...Until
ループよりも高速です。これは4Dが内部的にカウンター変数のテストおよび増加を行うからです。 したがって、可能な限り For...End for
ループの使用が推奨されます。
For...End for ループの最適化
カウンター変数 (インタープロセス、プロセス、ローカル変数) には実数、または倍長整数タイプを使用します。 数多く繰り返されるループの場合、とくにコンパイルモードでは、倍長整数タイプのローカル変数を使用してください。
- 次に例を示します:
C_LONGINT($vlCounter) // 倍長整数型のローカル変数を使用します
For($vlCounter;1;10000)
// なんらかの処理
End for
For...End for の入れ子構造
制御構造は、必要に応じて入れ子にする (ネストする) ことができます。 For...End for
ループも同じです。 誤りを避けるため、各ループ構造ごとに別のカウンター変数を使用してください。
次に例を示します:
- 以下の例は二次元配列の全要素への処理です:
For($vlElem;1;Size of array(anArray))
//...
// 各行に対する処理
//...
For($vlSubElem;1;Size of array(anArray{$vlElem}))
// 各要素に対する処理
anArray{$vlElem}{$vlSubElem}:=...
End for
End for
- 以下の例は、データベースのすべての日付フィールドに対するポインターの配列を作成します:
ARRAY POINTER($apDateFields;0)
$vlElem:=0
For($vlTable;1;Get last table number)
If(Is table number valid($vlTable))
For($vlField;1;Get last field number($vlTable))
If(Is field number valid($vlTable;$vlField))
$vpField:=Field($vlTable;$vlField)
If(Type($vpField->)=Is date)
$vlElem:=$vlElem+1
INSERT IN ARRAY($apDateFields;$vlElem)
$apDateFields{$vlElem}:=$vpField
End if
End if
End for
End if
End for
For each...End for each
For each...End for each
による制御フロー構造の正式な構文は以下のように なります:
For each(Current_Item;Expression{;begin{;end}}){Until|While}(Boolean_Expression)}
statement(s)
End for each
For each...End for each
構造は、Expression に含まれるすべてのCurrent_item に対して処理を繰り返します。 Current_item の型は Expression の型に依存します。 For each...End for each
ループは3種類の *Expression * を対象に反復処理をおこなうことができます:
- コレクション: コレクションの各要素をループします
- エンティティセレクション: 各エンティティをループします
- オブジェクト: 各オブジェクトプロパティをループします
以下の表は、For each...End for each
の3つのタイプを比較したものです:
コレクション内のループ | エンティティセレクション内のループ | オブジェクト内のループ | |
---|---|---|---|
Current_Item の型 | コレクション要素と同じ型の変数 | エンティティ | テキスト変数 |
Expression の型 | (同じ型の要素を持つ) コレクション | エンティティセレクション | オブジェクト |
ループ数 (デフォルト) | コレクションの要素数 | セレクション内のエンティティ数 | オブジェクトのプロパティ数 |
begin / end パラメーターをサポート | ◯ | ◯ | × |
- ループの数は開始時に評価され、処理中に変化することはありません。 ループ中に項目を追加・削除することは、繰り返しの不足・重複を引き起こすことがあるため、一般的には推奨されません。
- デフォルトでは、内部の statement(s) 部の処理は、Expression の各項目に対して実行されます。 しかしながら、ループの先頭 (
While
) あるいはループの終わり (Until
) で条件をテストすることで、ループを抜け出すことは可能です。 - 任意の begin および end パラメーターを指定することで、コレクションおよびエンティティセレクションに対してループの範囲を定義することができます。
For each...End for each
ループは 共有コレクション や 共有オブジェクト に対して使用することもできます。 コレクションの要素またはオブジェクトのプロパティを変 更する場合は、Use...End use
構文も追加で必要です。Use...End use
構文の使い方は、つぎのように状況に応じて異なります:- 整合性のため要素やプロパティを一括で処理しなくてはならない場合には、ループに入る前 (外側) に使います。
- 要素やプロパティを個々に変更して差し支えない場合は、ループの中で使います。
コレクション内のループ
For each...End for each
が Collection 型の Expression に対して使用された場合、Current_Item はコレクション要素と同じ型の変数です。 デフォルトでは、ループの回数はコレクションの要素数に基づいています。
コレクションの要素はすべて同じ型でなくてはなりません。そうでない場合には、Current_Item 変数に別の型の値が代入されたときにエラーが生成されます。
各ループの繰り返しにおいて、Current_Item 変数には、合致するコレクションの要素が自動的に代入されます。 このとき、以下の点に注意する必要があります:
- Current_Item 変数がオブジェクト型、あるいはコレクション型であった場合 (つまり Expression がオブジェクトのコレクション、あるいはコレクションのコレクションであった場合)、この変数を変更するとコレクションの対応する要素も自動的に変更されます (オブジェクトとコレクションは同じ参照を共有しているからです)。 変数がスカラー型である場合には、変数のみが変更されます。
- Current_Item 変数は、コレクション要素の型と合致していなくてはなりません。 コレクション要素のどれか一つでも、変数と異なる型のものがあった場合、エラーが生成され、ループは停止します。
- コレクションが Null 値の要素を格納していたとき、Current_Item 変数の型が Null 値をサポートしない型 (倍長整数変数など) であった場合にはエラーが生成されます。
例題
数値のコレクションを対象に、統計情報を計算します:
C_COLLECTION($nums)
$nums:=New collection(10;5001;6665;33;1;42;7850)
C_LONGINT($item;$vEven;$vOdd;$vUnder;$vOver)
For each($item;$nums)
If($item%2=0)
$vEven:=$vEven+1
Else
$vOdd:=$vOdd+1
End if
Case of
:($item<5000)
$vUnder:=$vUnder+1
:($item>6000)
$vOver:=$vOver+1
End case
End for each
//$vEven=3, $vOdd=4
//$vUnder=4,$vOver=2
エンティティセレクション 内のループ
For each...End for each
が Entity selection 型の Expression に対して使用された場合、Current_Item は現在処理中のエンティティです。
ループの回数はエンティティセレクション内のエンティティの数に基づきます。 各ループの繰り返しにおいて、Current_Item には、処理の対象であるエンティティセレクション内のエンティティが自動的に代入されます。
注: エンティティセレクション内のエンティティが、途中で他のプロセスによって削除された場合、そのエンティティはループにおいて自動的にスキップされます。
カレントエンティティに対して適用された変更は、entity.save( )
で明示的に保存する必要があることに注意してください。
例題
Employees データクラスの中から、英国の従業員の給与を引き上げます:
C_OBJECT(emp)
For each(emp;ds.Employees.query("country='UK'"))
emp.salary:=emp.salary*1,03
emp.save()
End for each
オブジェクト内のループ
For each...End for each
が Object 型の Expression に対して使用された場合、Current_Item は現在処理中のプロパティ名が自動代入されたテキスト変数です。
オブジェクトのプロパティは作成順に処理されていきます。 ループ中、プロパティをオブジェクトに追加/削除することが可能ですが、その場合でも残りのループ回数は、オブジェクトの元のプロパティ数に基づいているため、変化しません。