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バージョン: 開発中

共有オブジェクトと共有コレクション

共有オブジェクト および 共有コレクション はプロセス間でコンテンツを共有することができる、特殊な オブジェクトコレクション です。 インタープロセス変数 に比べると、共有オブジェクトと共有コレクションは プリエンプティブ4Dプロセス と互換性があるという点で利点があります。つまり、New processCALL WORKER といったコマンドの引数として、参照の形で渡すことができるということです。

共有オブジェクトと共有コレクションは、標準の Object および Collection 型の変数に保存されますが、専用のコマンドを使用してインスタンス化されている必要があります:

共有オブジェクトと共有コレクションには、スカラー値または他の共有オブジェクトや共有コレクションのみを含めることができます。 ただし、共有オブジェクトや共有コレクションは、標準の (非共有の) オブジェクトおよびコレクションのプロパティとして設定することができます。

共有オブジェクト/コレクションを編集するには、Use...End use 構文を使う必要があります。 共有オブジェクト/コレクションの値を読むにあたっては、Use...End use は必要ありません。

Storage コマンドが返す、データベースにおいて固有かつグローバルなカタログは、そのアプリケーション内あるいはコンポーネントからいつでも利用することができ、すべての共有オブジェクトおよびコレクションを保存するのに使用することができます。

共有オブジェクト/共有コレクションの使用

New shared object あるいは New shared collection コマンドでインスタンス化されると、その共有オブジェクト/コレクションの属性と要素は (特定の条件下で) どのプロセスからでも編集/読み出しができるようになります。

編集

共有オブジェクトと共有コレクションは、編集することが可能です:

  • オブジェクトプロパティの追加・削除
  • 値の追加・編集 (共有オブジェクトがサポートしている範囲内で)。これには、他の共有オブジェクトやコレクションの追加・編集も含まれます (この場合、共有グループを作成します。後述参照)

共有オブジェクトおよび共有コレクションの内容として設定されたオブジェクトやコレクションは、それ自体も共有されていなければならないことに注意が必要です。

共有オブジェクトあるいは共有コレクションを編集するコードは、必ず Use...End use 構文で保護されている必要があり、そうでない場合にはエラーが返されます。

 $s_obj:=New shared object("prop1";"alpha")
Use($s_obj)
$s_obj.prop1:="omega"
End Use

共有オブジェクトや共有コレクションを変更するすべての コレクション関数 は利便性のため、内部的に Use...End use 構文を使用します。そのため、これを別途コーディングする必要はありません。 例:

$col:=New shared collection()
$col.push("alpha") // .push() は自動で内部的な Use/End use の使用をトリガーします

同じコレクションに対して複数の変更を実行する必要がある場合、すべての修正を 1つの Use...End use で保護することができます。これにより、修正がまとめて実行されます。

$col:=Storage.mySharedCollection
Use($col)
$col[0]:="omega" // 要素の変更は Use/End use の中でおこなう必要があります
$col.push("alpha") // .push() は内部的に Use/End use をトリガーしますが、
// 変更をまとめて実行するために Use/End use 構文に入れます
End Use

一度に 1プロセスのみ、共有オブジェクト/コレクションを編集することができます。 Use は共有オブジェクト/コレクションを他のスレッドからアクセスできないようにロックする一方、End use はこのロックを解除します (ロックカウンターが 0 の場合; 後述参照)。 。 Use...End use を使わずに共有オブジェクト/コレクションを編集しようとすると、エラーが生成されます。 すでに他のプロセスによって使用されている共有オブジェクト/コレクションに対して、別のプロセスが Use...End use を呼び出した場合、先着プロセスが End use でロックを解除するまで、その呼び出しは待機状態になります (エラーは生成されません)。 したがって、Use...End use 構文内の処理は迅速に実行され、ロックは可及的速やかに解除される必要があります。 そのため、共有オブジェクト/コレクションをインターフェース(ダイアログボックスなど) から直接編集することは避けることが強く推奨されます。

共有オブジェクト/コレクションを他の共有オブジェクト/コレクションのプロパティあるいは要素に割り当てることは可能で、このとき 共有グループ が作成されます。 共有グループは、共有オブジェクト/コレクションのプロパティ値あるいは要素として他の共有オブジェクト/コレクションが設定されたときに自動的に作成されます。 共有グループを使用すると共有オブジェクトを入れ子にすることができますが、以下のルールに気をつける必要があります:

  • あるグループの共有オブジェクト/コレクションに対して Use を使うと、そのグループに所属するすべての共有オブジェクト/コレクションのプロパティ/要素がロックされ、ロックカウンターを 1 増加させます。 End use はグループのロックカウンターを 1 減らします。カウンターが 0 になると、すべてのリンクされた共有オブジェクト/コレクションのロックが解除されます。
  • 共有オブジェクト/コレクションは一つの共有グループにしか所属することができません。 すでにグループに所属している共有オブジェクト/コレクションを他のグループへと割り当てようとした場合、エラーが返されます。
  • 一旦グループ化された共有オブジェクト/コレクションについて、グループを解除することはできません。 一度共有グループに含まれた共有オブジェクト/コレクションは、セッション中はずっと同グループに所属することになります。 親オブジェクト/コレクションから子オブジェクト/コレクションへの参照をすべて削除したとしても、両者のリンクが解除されるわけではありません。

共有グループのルールについての詳細は、例題2を参照してください。

読み出し

たとえ共有オブジェクト/コレクションが他のプロセスによって使用中であっても、それらのプロパティや要素は、Use...End use 構文を呼び出さずとも取得することが可能です。

ただし、複数の値が互いにリンクしていてそれらを一度に読み出す必要がある場合には、一貫性の観点から、共有オブジェクト/コレクションを Use...End use 内で扱う必要があります。

複製

共有オブジェクト (あるいは共有オブジェクトをプロパティとして格納しているオブジェクト) に対して OB Copy コマンドを使用することは可能ですが、含まれている子オブジェクト含め、標準 (非共有) のオブジェクトが戻り値として返されます。

ストレージ

ストレージ は固有の共有オブジェクトで、各アプリケーションおよびマシン上で利用可能です。 この共有オブジェクトは、Storage コマンドによって返されます。 このオブジェクトは、他のプリエンティブあるいは標準プロセスからでも利用出来るように、セッション中に定義されたすべての共有オブジェクト/コレクションを参照するためのものです。

ストレージ オブジェクトは標準の共有オブジェクトとは異なり、共有オブジェクト/コレクションがプロパティとして追加されたときでも共有グループを作成しないという点に注意してください。 この例外的な振る舞いにより、ストレージ オブジェクトを使用するたびに、リンクされている共有オブジェクト/コレクションをすべてロックせずに済みます。

詳細な情報については、Storage コマンドの詳細を参照してください。

Use...End use

Use...End use 構文の正式なシンタックスは、以下の通りです:

 Use(Shared_object_or_Shared_collection)
statement(s) // ステートメント
End use

Use...End use 構文は、内部セマフォーの保護下において Shared_object_or_Shared_collection 引数に対して処理を実行するステートメントを定義します。 Shared_object_or_Shared_collection として任意の有効な共有オブジェクトあるいは共有コレクションを渡すことができます。

共有オブジェクトおよび共有コレクションは、プロセス間の (とくに プリエンプティブ4Dプロセス 間の) 通信ができるように設計されています 。 これらはプロセスから他のプロセスへ、参照型の引数として渡すことができます。 共有オブジェクトおよび共有コレクションを扱う際には、複数プロセスによる同時アクセスを避けるために、必ずそれらを Use...End use キーワードでくくる必要があります。

  • Use の実行が成功すると、対応する End use が実行されるまで、Shared_object_or_Shared_collection のプすべてのロパティ/要素は他のあらゆるプロセスに対し書き込みアクセスがロックされます。
  • statement(s) で実行されるステートメントは、Shared_object_or_Shared_collection のプロパティ/要素に対して、競合アクセスのリスクなしに変更も実行することができます。
  • Shared_object_or_Shared_collection に他の共有オブジェクトあるいはコレクションがプロパティとして追加された場合、それらも同じ共有グループとして連結されます。
  • **Use...End use ** 内ステートメントの実行中に、他のプロセスが Shared_object_or_Shared_collection のプロパティやリンクされたプロパティにアクセスしようとした場合、そのアクセスは自動的に保留され、実行中の処理が終了するまで待機します。
  • End use は、Shared_object_or_Shared_collection プロパティおよび、同じグループのすべてのオブジェクトのロックを解除します。
  • 4D コード内では、複数の Use...End use 構文を入れ子にすることができます。 グループの場合、Use を使用するごとにグループのロックカウンターが 1 増加し、 End use ごとに 1 減少します。最後の End use によってロックカウンターが 0 になった場合にのみ、すべてのプロパティ/要素のロックが解除されます。

以下の関数は、内部的な Use/End use を自動でトリガーするため、この構文を実行時に明示的に呼び出す必要はありません:

例題 1

それぞれ異なる製品の在庫更新を実行する複数のプロセスを起動し、同じ共有オブジェクトを更新していきます。 まずメインプロセスで空の共有オブジェクトをインスタンス化してから、共有オブジェクトへの参照と対象製品を引数として渡して別プロセス起動します:

 ARRAY TEXT($_items;0)
... // 在庫を確認する製品を配列に格納します
$nbItems:=Size of array($_items)
var $inventory : Object
$inventory:=New shared object
Use($inventory)
$inventory.nbItems:=$nbItems
End use

// プロセスを起動します
For($i;1;$nbItems)
$ps:=New process("HowMany";0;"HowMany_"+$_items{$i};$_items{$i};$inventory)
// $inventory オブジェクトは参照で渡されます
End for

"HowMany" メソッド内では、在庫確認が終わるとすぐに $inventory 共有オブジェクトが更新されます:

// HowMany メソッド
#DECLARE ($what : Text ; $inventory : Object)

$count:=CountMethod($what) // 在庫確認用のメソッド
Use($inventory) // 共有オブジェクトを使用します
$inventory[$what]:=$count // 当該製品の在庫を保存します
End use

例題 2

以下の例題は、共有グループを扱う際のルールについて説明しています:

 $ob1:=New shared object
$ob2:=New shared object
Use($ob1)
$ob1.a:=$ob2 // グループ1 が作成されます
End use

$ob3:=New shared object
$ob4:=New shared object
Use($ob3)
$ob3.a:=$ob4 // グループ2 が作成されます
End use

Use($ob1) // グループ1のオブジェクトを使用します
$ob1.b:=$ob4 // これはエラーになります
// $ob4 はすでに他のグループに所属しているため
// 代入することはできません
End use

Use($ob3)
$ob3.a:=Null // グループ2から$ob4 への参照をすべて解除します

End use

Use($ob1) // グループ1のオブジェクトを使用します
$ob1.b:=$ob4 // これもエラーになります
// $ob4 は依然としてグループ2に所属しているため
// 代入は不可能です
End use